第11回目の報告は、岩田研究員から「都市の農をについて考える3」として「「水とみどりに育まれた都市(まち)秦野」の農業を事例に~タバコから変貌した農村の今~」について報告をいただきました。(2022年5月)
富士山噴火による火山灰土を生かした秦野盆地の葉タバコ生産は、日本最大級の産地として発展してきたこと。タバコ栽培の輪作として栽培されてきた落花生は、日本最大の産地となった千葉県よりも、早くから栽培されてきたこと。こうした特産物の栽培が、高度な生産技術を育み、今日の秦野市の野菜栽培の集約農業に生かされてきていることを、「はだの煙草の栄枯盛衰」を振り返りながら、解説していただきました。
秦野市のタバコ栽培は昭和59年には完全に幕を閉じ、急速な都市化の進行に伴って、東京近郊の都市型農業に移行していくことになります。報告では、秦野市と同様に東京近郊に位置する東京都小平市(第10回報告)及び東村山市(茂呂研究員レポート)のデータを比較しながら、秦野市の農業の現状と今後について、分析を加えていただきました。
〇3市の共通の課題
1 後継者難。農業の存続が危うい。
2 農業収入拡大には販路の工夫が重要である。
3 都市農地の有用性を農民ばかりでなく、市民が同じように理解する必要がある。
〇秦野市の取組
1 「はだの市農業塾」新規就農コースあり。市民農園や家庭菜園よりも本格農業指向
2 「はだの都市農業支援センター」の設置 構成メンバー 市・農業委員会・JA
3 JA大型直売所「じばさんず」の取扱高増大。農家とスーパーや飲食店との直接取
引が拡大
秦野市は、上記のように農業者・市民・関係団体及び行政がそれぞれの役割を分担し、課題解決に向けて意欲的な取組を行っています。しかし、当事者である農家と市民が受け身である感は否めませんが、農民とともに市民が耕作や農産加工に参加する新たな姿を思い描きたいとの指摘は、あながち夢ではないように思います。
小平市、東村山市、そして今回の秦野市と見てきましたが、岩田研究員が指摘しているように、3都市の農のありようは共通の課題を持ちながらも、地域をとりまく環境の違い・特性からその取り組みは異なる所があることが分かりました。成功例をそのままコピーしようとしても必ずしもうまくいかないことが多いだけに、それぞれの地域のどこに目を向け、どのような持続可能な取組が有効かについて、さらに掘り下げた研究が必要であると感じたところです。
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