第2回報告「原発集団訴訟とふるさとの価値」(山川充夫)

 第2回目の報告は、山川顧問から「原発集団訴訟とふるさとの価値」というテーマで報告をいただきました。(2019年4月)

 東日本大震災原発災害では、今なお、4.9万人(2018年3月)の福島県民が県内外で避難生活を強いられています。原発災害の被害者は、放射能汚染された居住地に相当期間戻れず、その汚染度の違いによって、帰還・復旧・復興への道筋はさらに一層複雑化し、極めて困難な状況に置かれています。

 報告では、被災当初から最近の避難指示解除に至る、被災者に降りかかる幾重もの累積的被害を「ふくしま復興ジレンマ」として捉え、発災後8年間の「人」「生業(なりわい)」「地域」の各側面の様々なデータから分析をしていただきました。

 その中では、長期避難によって、家族やコミュニティが分断され、地域再生どころか地域空白の危機がつきつけられていること。国や県による除染や様々なインフラ等の整備が一定程度進みつつも、なお帰還の足取りは重く、避難者はまだ居住地の選択に迷っている実態が明らかになりました。

 また、東電の責任を認める各地の民事集団訴訟判決が出される中、それらの判決に影響及ぼした前橋判決では、ふるさと喪失などを核とする平穏生活権を侵害したとする賠償命令がなされ、避難者の生活再建や被災地の再生に関する制度設計の在り方に影響を与えるものとして注目されていることが分かりました。

 今後は、こうした被害累積性という深刻な事態を念頭に置いた被災地の再建に政府が全責任を持つ生活再建策を講じるとともに、生活拠点の二重性を当面保証する制度の構築が必要であるということ。さらには、福島県復興ビジョンの第1原則として掲げる「原発に依存しない社会」の実現が不可欠であると展望していただきました。

 山川顧問から提起された課題を契機として、ふるさとそのものを喪失した被災者の気持ち、被災地域の困難性、原発問題の複雑性に私たちがどう関わり、何ができるのかを考えていきたいと思います。

 今年予定している福島巡検はそのための一つの機会になれば良いかと思います。

報告資料は下記「地誌東京研究会第2回報告」を👆クリックしてください。

 また、報告に関する参考資料は、最下部➀②③をご覧ください。

地誌東京研究会

本会は、地理及び地誌に関心を持つ会員の交流を図るとともに、 対象とする地域の調査・分析を通じて、 地域の課題解決に向けた取組や持続可能な将来像について 記録・研究することを目的としています。

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